大判例

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札幌高等裁判所 昭和27年(う)639号 判決

一、弁護人の控訴趣意第一点(事実誤認或は証拠によらず事実を認定したか、又は理由不備)について。

刑法第二五二条第一項の横領罪が成立する為には委託関係に基き自己が占有する他人の現物に対し領得行為をするによるものであつて、刑法第二五五条において同第二四四条の規定を準用するので犯人が親族の委託により占有せる財物を擅に領得したときは同条によりその刑を免除し又は告訴を待つて論ぜられるべきものであるけれども、その領得した物が親族以外の者の委託による場合は、たとえ親族から財物を交付されたとしても、該事実を知つて擅に領得したときは横領罪を構成するのであつて、原判決挙示の証拠を検討すると、松田敏子は被告人の姉であり深川金作は被告人の兄であることは所論のとおり認められるが、原判示第一の事実の金一万円については金五千円は水本時敏が松田敏子に渡し、金五千円は右水本の依頼により松田敏子が、同人のために立替え、右松田よりこれを被告人に交付したもので、右立替金は昭和二七年二月二五日頃右水本から右松田に返済しているもので、労務者の前渡金として金一万円を被告人に委託したのは水本時敏であつて、これは被告人も承知していたものであることが認められるのであつて、また原判示第二の事実の金一万円は被告人の兄である深川金作が被告人に送金したものであるが、それは取次であつて、右金一万円も被告人に委託したのは深川金作でなく渡辺孝蔵であつて、該事実は被告人も知つて受取つたものであることが認められる。そして使途も一定して交付された金銭は所定の用途に使用されるまでは委託者の所有にあるものであるから、これを擅に委託の本旨に違つた処分をしたときは、横領罪が成立することは勿論であつて、原判示第一、第二の金員は何れも労務者に対する前渡金として被告人に委託されたものであつて、被告人が原判示第一、第二の事実のとおり委託金を自己の生活費等に充てる目的を以て擅に領得したものと認めるに十分であるから、原判決が横領罪として処置したのは当然であつて原判決には所論のような違法はない、論旨は理由がない。

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